日本三大美林のひとつである「青森ヒバ」は別名「あすなろ（翌檜）」和名「ヒノキアスナロ」と呼ばれている檜（ひのき）の仲間で青森県の特産品です。青森県では昭和41年に県木に制定されました。ヒノキアスナロの名前は「明日（あす）こそ檜（ひのき）のようになりたい」という県民の願いを青森ヒバに込めた気持ちから来ているとも言われています。
天然の檜や杉の資源量は年々減少傾向にありますが、青森ヒバは日本固有の種として現在でも全国の80％以上が青森県に群生しています。天然木として樹齢200年を超すものが多く現在でも1,300万立方メートルもの資源量を誇り97％が国有林です。成長率は1％が天然更新であるため将来的にも毎年10万立方メートル以上の安定供給が約束されています。
青森ヒバの最大の特長は昔からの建造物に使用されている例（中尊寺金色堂など）からしてもわかる通り、耐久性・耐湿性・防蟻性などが挙げられます。青森ヒバの特長を支えているのは青森ヒバの木材の中にある油分（ヒバオイル）でありその成分（ヒノキチオール）です。
青森ヒバのヒバ油はかつては青森津軽の工芸品「津軽塗」の品質を落としてしまうということからヒバ油は除去し産業廃棄するものと扱われてきましたが、昭和62年に同じく青森県弘前市の青森県工業試験場総括主任研究員の岡部敏弘氏がヒバ油の抽出成分に着目し青森ヒバの廃材からヒバ油の抽出する実用化システムを開発しました。岡部氏はヒバ油に含まれる抗菌・防虫効果の優れた成分を利用し病害虫の防除剤・食品の防腐剤等も開発しました。
青森ヒバの伐採量は年間196,000立方メートルで、建築用材の切れ端などの廃材、オガクズは約20％になります。この廃材を利用し抽出します。
青森ヒバの成分の一つ、ヒノキチオールは金属と反応し、発色しますので鉄製ではないセラミック性フィルターを使用します。
オガクズを水蒸気で蒸し、出てきた水蒸気を冷却し、液体にして取り出すと黄色い油分のみが上に浮きます。抽出された液体の上の黄色い油分がヒバ油で下部分は翌檜（あすなろ）香と呼ばれます。ヒバ油は50分の1の重量比しかありません。
ヒバ油は大きく中性油と酸性油です。中性油の主成分はツヨプセンというセスキテルペンでこれはヒバ油全体でも約86％含まれている主成分です。他方酸性油はヒノキチオールとβードラブリンです。
翌檜香の成分ヒノキチールはというと、ヒノキチール含有量もヒバ油に等しいとされています。
ヒノキチオールとは青森ひば由来の抽出液です。「におい」だけでも殺菌効果を持つ天然のヒノキチオールが含まれています。低濃度でも多くの雑菌類やカビ類、ダニなどの増殖を抑える力があります。
幅広い抗菌作用があり、食品用防腐剤、育毛剤、化粧品等幅広い分野で使用されています。また弊社が依頼した北里環境科学センターでの試験では、新型コロナウイルスと類似するネココロナウイルスにおいて、青森ひば抽出液でウィルスの毒性が消えたとの報告がありました。
ヒノキチオール（Hinokitiol）1936年に野副氏によって台湾檜の油分から世界で初めて単離・命名され同氏により珍しい七員環の化学構造だと明らかになりました。近年は天然・自然志向も高まりさらに注目される物質です。
ヒノキチオールを含む木材の種類は数少なく、木材の中で最も含有率の高いものが青森ヒバです（ヒノキチオールという名称ですが日本の檜には含まれていません）。ヒバの幹より根に多く含有されています。生姜・にんにくに見られるように根っこ部分は抗菌力が高い傾向にあります。植物は根が枯れると他の部分も枯れてきます。免疫用の樹液を根っこ部分が持っています。青森ヒバは精油はヒバ油で抗菌作用の元はヒノキチオールになります。
参考文献 あすなろ研究会・青森県工業試験場（岡部敏弘 斎藤幸司 大友良光）
